銭湯の大きな鏡に映し出された私の体は、なんだか黒ずんで見えた。

汚れてる・・・

私はスポンジを手に取り、男と触れたあらゆる部分を力任せに擦った。

もっと・・・

もっと擦らないと・・・

男のバイ菌が・・・

取れない・・・

私は無我夢中で全身を擦った。

「お嬢ちゃん・・・。そんなに強く擦ると駄目じゃよ。」

右に目をやると小さなおばあちゃんが浴槽の中に浸かっていた。

私はハッと、正気に戻った。

鏡に映し出された私の体は、全身を引っ掻かれたかのように真っ赤になっていた。

おばあちゃんは私の方にゆっくり近づくと、私のスポンジを取り、そっと優しく背中を擦ってくれた。

「ま~ぁ、こんなに綺麗な肌して・・・。体は大切にしてやらんとなぁ・・・。」

私はその言葉を聞いた瞬間、涙が溢れてきた。

これで消毒されたわけではないが、私の体は少し綺麗になった気がした。

しかし、心の傷は決して癒える事はなかった・・・。