これも想定外だったのか流と名乗ったそいつが一瞬固まる。

「そんなこと言わないでさぁ。もうホテルいこうよ。」


そろそろ時間だ。

「だから、そのへんの子、はやく捕まえにいってくださいよ。」

「だから、明日菜ちゃんがいいんだって!」

できればこの流と名乗った人に、このベンチから立ち上がり、先に目の前の雑踏に紛れ混みにいってほしかった。

でも、どうみてもあと1、2分で立ち上がって去っていく気はなさそうだ。


遠くで聞こえるアナウンスが私が乗る予定の一本前の電車の出発を告げている。


はぁ。私は流と名乗ったそいつに向かって、あからさまにため息をつく。

「そろそろ電車の時間なので、残念ですが、いきますね。」

私はそう言って真っ直ぐ流と名乗ったそいつの顔をみつめ、にっこり微笑んだ。

「え~もう行っちゃうの?」