隣にいる人間が嫌なら、
面倒くさいなら、
適当に理由をつけて立ち上がり、
目の前の雑踏に紛れてしまえばいい。
そしたらそれだけのこと。
おそらく二度と会うことのない他人なのだ。
そんなことは重々承知している。
それでも…、
私はそのベンチから立ち上がらなかった。
立ち上がれなかった。
いや、立ち上がりたくなかった…。
おもしろがっている反面、
現実を突きつけられるのが怖かった。
こういうときはいつも、
感情がいくつも複雑に渦を巻いている。
私は私でありたいだけなのに、
私は私であることを怖がっている。
流と名乗ったこの人はどんなふうに私をみているのだろう。