「クリスタルリバー」

「クリスタルリバー」


ぼくの声に、同意するように黒猫さんはくりかえした。


「黒猫さん、名前は?」

「今は名前なんかないんだけど」

「今はって?」

「昔はあったよ、マリン。

あんたみたいにさ。

大好きなご主人さまがいて。

ミールって、そう呼んでくれてた」

「ミール」

「そ。ロシア語で平和って意味なんだって。

ご主人さまが言ってた」

「いい名前だね」


ミールはごろごろとのどを鳴らした。