「あんた、何て言うの?」


黒猫さんの後ろには、とてもとてもきれいな川が流れている。

どこまでも澄んだ水。

どこまでも透明な水。

…なんだっけ。

ぼく、なにか大切なこと、忘れてる。


「な・ま・え」


黒猫さんは、答えないぼくにすこしいらだった声を出した。


「マリン」


あ。
ここでは声が出るんだ。


「ん。マリン、あんた、ここがどこだか分かる?」


「分からないよ」


黒猫さんはむずかしい顔をする。


「あの川」


黒猫さんがあごでしゃくった先には、


きらきらと陽の光を反射させて輝く澄んだ川。


「あんた、知ってるんじゃないの?

…見たことは、なくても」