他にぼくたちがよくした遊びは、ひっぱりあっこ。

破れてもういらなくなったお父さんの靴下を、あんずがこま結びにしてくれて。

真ん中におっきな団子を作るんだ。

ひとつの端をあんずが持って。

もうひとつの端をぼくがくわえる。

それで、思いっきりひっぱり合うんだ。

ぼくは意地でも離さなくて、しまいにはあんずが先に離しちゃったよね。

そしたらぼく、つまんないからさ。

あんずのところにもう一回靴下を持ってくんだ。

そうするとあんずはイーって歯を見せて、ぼくをくるりとかわす。

かわいい笑顔を見せながら、ぼくの名前を大きな声で呼ぶ。

ぼくだって大きな声であんず、って叫びたかった。

だけどぼくは吠えなかった。

だってあんずがさ、

「マリンは全然吠えなくてほんといい子だねぇ」

っていつも褒めてくれてたから。

心の中だけで叫んでた。

あんずの名前。

いつもいつも。



大好きだよ、あんず。