「おい、五十嵐、大丈夫か?」


『え?うん、大丈夫だよ』



放課後、上の空のあたしを
心配そうに宮原くんが見つめた。


あたしは慌てて笑顔を作る。



んー。
どう考えても何もかわらない。


茜くんと付き合うってことになったときは、


茜くんはあたしのこと名前で呼んでくれて、
一緒に帰ったり、


前より話したりしたんだけどなぁ・・・。



宮原くんとは何も変わってない。


むしろ、前より会話が減ったような・・・。



「五十嵐・・・?」




あれ?そもそもあたしたち、
そういう関係になってない?



そうだよ。好きだって言われて、
あたしも好きだよって言って、


それだけじゃん。


(付き合うとは・・・言ってない・・・かもっ!?)




「真奈美!!」



『え・・・!?』



いきなり名前を呼ばれて、
あたしは咄嗟に宮原くんの顔を見た。



宮原くんははっとして、
すぐにそっぽを向いた。


あれ?


今・・・。



『“真奈美”って・・・』



宮原くんはしばらくそっぽを向いて、
だけど、すぐにあたしのほうに向き直った。


あたしの頭に手を乗せて
くしゃくしゃっとする。