(聞こえてない……!?)



あたしがいくら呼んでも、彼は振り返ってくれなかった。
あたしがいくら叫んでも、彼は止まってくれなかった。



ただ、一人の男子を掴み上げて、拳を振り上げている。


近くには血が飛び散っていて、相手の男子も負けじと殴り返すから、
もう誰も、彼らを止めることは出来ずにいた。



「なんだよ。宮原!…いきなり教室に入ってきて
 俺らの邪魔すんなよな!!」



「あ!?今なんつった?」


「真面目に生活してる俺らの邪魔すんなって
 言ったんだよ!!迷惑かけんなよ」


そんな…。どうしてそんなこと言うの?


あなたたちがそんなふうに言うから、
だから、宮原くんは…。



“俺がいないほうが…”


“どーせ見限られてっし…”


“いーんだよ。別に”




『宮原くん、ごめん。あたしが悪かったの。
 もうやめよう?お願い、宮原くんっ!!』



「だったら、初めっからそう言えよ!!
 半端に、興味本位で俺に近付くんじゃねぇよ」


「は!?なんだよ。んなに怒んなよ。
 お前じゃなくて、五十嵐のこと言っただけだろ!?」




え……?




あたし……?




なんで、あたしなの…?




あたしが呆気にとられていると、
宮原くんはもう一度、拳を振り上げた。



『きゃあっ!!』



鈍い音が聞こえた。