「あの、樹里って今も泣いてるんですか?」

「ヤケ酒中」

「あまり飲ませないように、お願いしたいんですけど」

「了解」

電話を切ると、すぐに会社から飛び出した。

車でマスターの店へ向かった。

もう一度、樹里と話をしよう。

もう一度、樹里とつき合いたいんだ。

樹里はかけがえのない、大切な人だから。

絶対にもう手離すことはしない。


マスターの店に到着した。

店のドアを開けるなり、

「樹里!」

名前を呼んでいた。

「亮二…」

樹里が目を丸くしている。

「帰るぞ」

オレは樹里の手を握った。

「離してよ!」

手を振りほどかれてしまった。