村中は、ご飯に行くのをあきらめてくれた。

そして、事務所を出て行き帰って行った。


それから、書類作成をキリのいいところまでやって、帰ろうとしていたら。

携帯が鳴った。

着信は樹里の行きつけの店の、マスターからだ。

「もしもし」

「うちの妹をよく泣かしてくれたな」

「妹?」

「樹里のことだよ。オレにとっては、妹みたいなもんだから」

「樹里泣いてるんですか?」

「心当たりあるか?」

「……」

やっぱり、樹里は他の女とご飯食べに行くと勘違いしてたんだ。

「まだ好きなら、樹里のこと迎えにこい」

マスターは続けてこう言った。

「もし迎えにきたらの話だけど、今度こそ手離すようなことするなよ」