少しして、

「佐伯、どうしたの?」

樹里が玄関のドアを開けながら聞いてきた。

「いや、今日、休みだったから、風邪でもひいたかと思ったけど、そいうわけでもなさそうだな」

「その袋もしかして…」

「風邪だと思って、フルーツ買ってきたんだけどいらなかったな」

「ありがとう。仕事帰りなのにごめんね」

そう言いながら、なぜか樹里はフルーツを受け取ろうとしない。

「今日、何してたの?」

「映画観に行ったの」

「もしかして、男?」

「男だけど、弟みたいな友達だよ」