話題は樹里のこと。

「啓介は樹里の携帯知ってるんだろ?」

「知ってるよ。同じ部署だしな」

「いいな…。オレなんて携帯すら教えてもらえないんだよ」

ノンアルコールのビールを一気に飲みほした。

“樹里を口説く”─そう宣言したものの、オレは樹里にことごとく相手にされていなかった。

あれから2週間。
毎日話しかけて、樹里ちゃんから、樹里と呼べるようになったくらいしか。
進歩がなかった。
 
「さすがの亮二もお手上げか?」

「お手上げなんて言ったら、あきらめるようなもんだろ?」

「あきらめつかないくらい惚れてるんだな」