「樹里。今日はありがとうな」

「何が?」

「拓也と会わせてくれて」

「いい奴だったでしょ?」

「うん。会わなかったら、拓也のこと誤解したままだったよ」


拓也というのは、樹里とオレが揉める原因になった、林拓也のことだ。

実は、ついさっきまで会っていたのだ。


1月下旬、拓也が退院したという話を樹里から聞かされた。

そして、拓也に会って欲しいと頼まれた。

男友達をわざわざ、彼氏に会わせようとするのが樹里らしい。

マスターの店で会ってみて、拓也の印象はガラリと変わった。

好青年という言葉がよく似合う男だった。