「オレが退院してから、お詫びにご飯誘ったけど、あっさり断ったんだよ」

「そんなことあったかな?」

樹里は本当になにも覚えていない。

「オレ樹里の顔すげータイプだったから、気になり出したんだよ」

「こんな顔がタイプなの?」

樹里が笑った。

「半年間、すっげー悩んだよ。見込みがなさそうだから、あきらめようかなとも思った」

オレは続けた。

「でも、オレあきらめつかないくらい好きになってた。で、例の暴行事件があって、樹里が徒歩通勤なの知ってたから、思い切って声かけた」

「そいうことだったんだ」

樹里が目を丸くしている。

こんな、エピソードが隠れていたとは思いもしなかっただろう。