栄転ということで役職は係長から課長になった。
が、転勤先は進出に失敗した県にまだ残っている支社とは名ばかりの支社。
所長を含めて3人しか人員がいない。
当然することがない。
暇だ……
「すみません。ちょっと外回ってきます」
俺は所長にそう声をかけ、堪らずに社の外に出た。
回るところなんてない。
知らない土地でどう回ればいいのかすらわからない。
ただ歩いた。
あてもなく歩いた。
もう嫌だ……
こんな毎日……
こんな人生……
一瞬『死』という言葉が頭を過るが大きく頭を振る!
どれくらい歩いていたのか……ふと立ち止まる。
『いったい此処はどこだ?』
キョロキョロと辺りを見回す。
『ん!?運気上昇天創造教会!?』
俺の目の前に継ぎ接ぎ感の否めない怪しげな看板が現れた。
「怪しい……怪しすぎる」
頭ではわかっているのに、
『運気上昇』の文字が俺の眼を捕らえて離さない。
「ちっちくしょう……釘付けだぞ!今の俺!」
悔しくて思わず口に出す。
「やめろ!やめるんだー!俺ー!」
だが……俺の足はその看板を掲げる建物へと吸い込まれた。