「(ったく、兄貴のやつ…)」
俺は暗くなった帰り道を1人とぼとぼ歩いていた。
ガードレールを挟んで車道に走る車のライトが眩しい。
あれから俺は、
「授業に戻らないの?」
と涼子に言われ仕方なく教室に戻った。
あんな悲しい顔を見せられたらさすがに反論もできない。
教室に戻るととっさにクラスメイトの人達が、
「ったくー、どこいってたんだよ」
「お前がいない間授業、つまんなかったんだからなー」
「刹那いないとつまんなぁい」
「ねぇ、刹那!今度ウチ来ない??見せたいものがあるんだぁ♪」
とか。
そんなみんなの声に心が少し軽くなって、温かくなっていくのを感じた。
俺を囲んでいた人を掻き分けて1人の女の子がひょっこり顔を出し謝罪の言葉を述べていた。
悠太の前の席の子だ。
「頭おかしくなった?」って、言っていた女の子だ。
俺は笑って頭を撫でてあげた。
「はぁ…」
そんなこんなで今は《6:55》。
周りを見れば俺とは真逆に楽しそうに話す同じ学校の生徒たち。
カップルもいれば同性の友達同士も。
それに比べて、俺は……。
「(なんて、可哀想な男なんだよ……)」
ポケットに手を突っ込み、俯く。
『虚しいな』
「(んだよ)」
『主は孤独か?』
「(おーきなお世話だ)」
俺はもう慣れたように会話をしていた。
慣れ、というのは恐ろしいと改めて感じた。