彼女の横に僕は倒れた。
僕は彼女に腕まくらをして、彼女はずっと僕のほうを向いている。
彼女は僕を彼女のほうに向かそうとしてきた。


クチビルがつきそうなぐらいに顔が近くにある。
そのまま彼女は目を閉じてそのまま眠りについた。
僕はしばらくその寝顔を見つめていた。


彼女は眠りについても、僕にしがみついたままだ。
この日はよく歩いて、僕も疲れていた。
そろそろ僕にも睡魔が襲ってきたようだ。


僕も彼女の温もりを感じながら、彼女と一緒の夢の中へ行くとしよう。
もはや、そのまま目覚めなくてもいいぐらいの気持ちだった。






翌朝、彼女は少し恥ずかしそうな顔をしていた。
シャワーを浴びると言うので「一緒に入っていい?」と言ったら断られた。


それでも僕は悲観したりはしない。
こうして僕達はまた大きな一歩を進んだ。
僕はそれだけで十分だった。



この経験後、僕達は何故かまた付き合い始めたばかりの気分になった。
なぜだろう・・・・。







新しいスタートを切ったという事だろうか・・・?
僕達は付き合い始めて5ヶ月ぐらいになった。
順調にお互いの愛を成長させてきた。


ここまでいい事ばかりだったが、一緒の時間を過ごすとどうしても亀裂みたいなのが生じてくる。




その理由が何であれケンカなども起こるであろう。
ささいな理由であってもそれが二人を別れさせる場合もある。
しかし、それをきっかけでより一層愛を深める場合もあるだろう。



僕達が始めてケンカをしたのはこの5ヶ月ぐらい経った頃だった。
その理由はハッキリと覚えている、会う機会がめっきり減ってきたのだ。




この頃に僕は現在いるサッカーチームに入団した。
そのチームは活動する日が多く、僕はいつも熱心に参加していた。


おかげで彼女に会う機会はもちろん、連絡などもおろそかになっていた。
一緒の職場なのだが、僕達は顔を合わす機会が少ない。
それにいまだに職場での僕達の関係は知られていない。




チームの活動拠点は横浜市だ。
彼女が住んでいるのも横浜市だ。
しかし僕は彼女を一度も試合や練習に連れてきた事はなかった。


なぜならそのチームは「遊び」ではなく「真剣」なチームだったからだ。
僕は集中してやりたかったので、あえて呼ばなかった。
こうして彼女との過ごす時間が少なくなった理由で彼女が怒った。
僕はサッカー以外の事では滅多に怒らない。
外食で料理に髪の毛が入っていても、どかして黙って食べる。





僕は仕事とサッカーは同じぐらいに考えていた。
でも彼女が怒るのも当然な事だとは思った。


なので僕は特に言い訳はしない、思いっきり僕の個人的な理由が原因だったのを分かっていたからだ。


謝って最初は済んでいたが、次第にそれも通用しなくなってきた。
やはりこの生活を改善する必要があった。






サッカーの機会は減らさないが、サッカーに彼女も連れてくるようにした。
終わったあとに一緒に食事などをして一緒の時間を過ごした。


彼女は会う機会が少なくなると不安も出てくると言う。
その言葉を真摯に受け取った私は、これ以降連絡もマメに行うようになった。




話すコトもないのに電話をしたりして、不安を取り除こうと努力をした。
次第に彼女の怒りもおさまっていき、不安も感じる事がなくなったようだ。





僕達の仲が悪くなったのはこれ一回だ。
僕が言い争いを避けるほうなので、ケンカらしいケンカは起こらなかった。


ケンカで別れるケースもあるだろうが、僕達はこれでより一層愛を深めた。
それに別れる時は気持ちよく別れたい。




僕は将来、彼女が出来たら言わせてみたい言葉がある。
それは・・・・












「サッカーと私、どっちが大事なの?」・・・だ。
僕に人生初めて彼女ができ、ここまで前回のケンカも含めてひと通りの経験をしてきた。





人と付き合い始めると、一人の時と違い色々とイベント事が発生する。
一人の時せいぜい自分の誕生日ぐらいであろう。





ケンカからわずか2週間ほどで彼女の誕生日がやってくる。
もちろん男として見逃すワケにもいくまい。
僕は何かをプレゼントしようと思った。


しかしここで問題発生。
僕は彼女が何がほしいとかが分かっていなかった。
よく「気持ちがこもっていれば」と言うが、本当に何でもいいのだろうか?




実際に彼女に聞いてみてもよかったが、それだとサプライズがない。
誕生日を気づいていないそぶりをして、ちゃんとプレゼントを渡す。
こんなシーンにしたかった。
僕は何にしようか考えた。
これまでの彼女との会話で、何に興味があるのかを思い出そうとしたが思い出せない。



僕はいろいろと考えた・・・・・




カワイイ洋服?


確かに女性はカワイイ洋服は好きだろう。
しかし僕にいい洋服を選ぶセンスはない。
それに僕好みの洋服(露出多め)をセレクトしまいそうだ。




カワイイ下着?


カワイイ下着はもちろん僕も好きだ。
しかしそんな売場に足を踏み入れる勇気は僕にはない。
こんなプレゼントを渡したら、その場でお別れになる危険がある。



カワイイぬいぐるみ?


これはまるで子供に渡すようなプレゼントだ。
彼女は僕よりも年上の24歳、これはやめておこう。




僕の部屋の鍵?


こんなプレゼントはある意味大きな賭けだ。
成功すればカッコイイが、そもそも僕はまだ実家だ。
考慮するに値しない。




おしゃれな腕時計?


僕は高校時代、誕生日に後輩から腕時計をプレゼントされた事がある。
当時の嬉しかった思い出を思い出し、この嬉しさを彼女にも与えようと思った。
腕時計を買いにデパートへ行った。
しかし僕は腕時計よりも、別の物に興味を惹かれた。
それはネックレスだ。


彼女に渡す事よりも、僕自身がほしかった。
何かお揃いのネックレスを買おうと予定変更をした。


すぐに店員が寄ってくる。
僕一人で選ぶセンスがないので、僕は女性店員に相談した。


僕はその店員に言われるがままに、ネックレスを2つ購入。
値段は2つで25000円くらいだった。





こうしてプレゼントは決まった。
次は渡す場所を考えなくてはならない。
雰囲気を重視する僕は、すぐにその場所は決定した。









そこは僕もまだ行った事のない場所で、行ってみたい場所だった。
僕に初めて彼女ができ、初めて誰かの為に僕は色々と考え行動する。


以前までは自分自身の為に生きてきたが、誰かの為に努力をするというのも楽しいものだと学んでいた。



僕は親父の愛車で待ち合わせ場所に向かった。
もちろん、僕の胸ポケットにはプレゼントのネックレスを忍ばせてある。
大丈夫だ、何も問題はない。



彼女が現れて、僕は彼女を車へエスコート。
さあ出発といきたいところだが、これから行く場所は僕は行った事がない。


車にはカーナビは搭載されていないので、僕は地図で目的地を探した。
そこまでの道のりを確認した僕は、ようやくアクセルを踏む。


これから行こうとする目的地は・・・・・





「東京ディズニーランド」だ。




僕はおとぎ話やファンタジーにはあまり興味がない。
しかしディズニーは一度くらいは行ってみたかった。


一人で行くところじゃないし、男同士で行く場所でもない。
今回はようやくチャンスがやってきたのだ。
現在ではディズニーシーというのがあるらしいが、当時はまだなかった。
僕はハイウェイに乗りアクセルを踏み続けた。
多少の沈黙が続いたので、何か音楽をかけようと思った。
CDを漁ってみたが、ロクなのがない。


ならば僕は気になっていた疑問を彼女に投げかけてみた。




「東京ディズニーってあるのに、何で千葉県にあるの?」




彼女は「そんなコト言われても困る」みたいな顔をした。
僕もそれほど理由は知りたくなかったので、あっさり諦めた。




着いて何でも乗れるチケットを購入して場内へ。
そこは感動的な場所だった。
僕の表情を見て彼女は「初めて来たの?」などと言われてしまった。



まずはプレゼントの事を忘れて全てのアトラクションを楽しんだ。
一番つまんなかったのはゴーカートみたいなヤツだった。



すぐに夜がやってきて、歩き疲れた僕達はベンチで休憩。
そろそろプレゼントを渡そうと思った。
彼女は喜んでもらえるだろうか?


「今日、誕生日だったね」とおもむろにネックレスを1つ出す。
彼女の表情は嬉しいというよりもビックリした表情だった。


彼女はすでに自分のネックレスをつけていた。
それを外してくれて、僕があげたやつをつけてくれた。


それを見て僕はもう1つのネックレスを出す。
「同じやつをオレもつけておくよ」と言ったら嬉しそうだった。
どうやらこのプレゼントは正解だったようだ。




こうして僕達の愛の証をお互いに持った僕達は、お互いに大満足でディズニーを後にする。


この夜に彼女のカラダを抱いたのは言うまでもない。










え?
まだそのネックレスは持っているかって?
手元にはないが、実家にあると思う。
してやったりの誕生日から約2年後、僕達はどこにでもいるカップルのように二人の時間を過ごしてきた。


軽くケンカもする時もあったが、そこはお互いに納得するまで話し合って解決をしてきた。




さすがに結婚までは意識はしていなかったが、これからも彼女との関係は続くのだろうと思っていた。



こんな順調な日々を過ごしていた二人にちょっとした変化が訪れた。
会社の人事異動の為、彼女の勤務する店舗が変わってしまったのだ。


転居を伴う異動ではなかったが、彼女と働く場所が変わってしまった。
僕は「まあ仕方ない」と、あまり気にはしなかった。




今まではお互いに目の届く場所にいたが、これでそれは出来なくなった。
この異動の後、会える機会は3週間に1回ぐらいになっていた。




僕は会えないもどかしさはサッカーで解消していた。
彼女にも同じようなもどかしさはあっただろうか?
それは今さら確かめようもない。



それでも久しぶりのデートでは思いっきり楽しんで、そして思いっきり彼女のカラダを抱きしめてきた。