が、特に気にもとめず部長が行ってしまうと、安達と花倉は話のつづきをしながら歩き始めた。

いつもと変わらない朝の風景に違和感を覚え、花倉は反射的に後ろをふり返ると、さっき通り過ぎた女性が同じようにふり返っていて、

…花倉と目が合った。

「あ…」

と口にした後、花倉は驚きのあまり固まってしまった。

その顔を満足げに見て、その女性はイタズラっぽく笑みを浮かべると立ち止まった。

「おい、どうした?花倉」

安達が大きな声で叫ぶと、フリーズしてしまった花倉の肩をゆさぶった。            

その騒ぎと、立ち止まった女性に気づいて部長もふり返ると、不思議そうに自分の部下と女性を交互に見た。

「どうかしましたか、星川さん…知り合いでも?」

「はい…大学の同期が…」

「ああ、花倉君かぁ…おーい花倉君、今日から本社に派遣で働く事になった星川瞳さんだー覚えているかー?」