「…好きだよ…知らなかった?」

「うん…」

「…それから仕込みは、これじゃないから」

「え?」

「あっちで会おう…」

花倉が気づくと、星川の姿はもうなかった…





「おはよう花倉、暑気払いの幹事だって?大変だな〜」

肩を叩かれてふり向くと、同僚の安達がにこやかに立っていた。

「朝から元気だなぁ、安達は…」

朝の弱い花倉は職場に向かうため、会社の入っているビルの長い渡り廊下を、フラフラと歩いていた。

「そう言えば今日、派遣社員が一人入って来るって聞いてるか?なんでも、大企業出身だって…どうしてまたうちなんかを…って前評判」

「へぇ…」

花倉は安達と話しながら歩いていると、前方から部長が歩いて来るのに気づいて会釈をした。

「おはようございます」

「おはよう」        

安達と息もぴったりに頭を下げると、部長のすぐ後ろから歩いて来ていたスーツ姿の女性が通り過ぎるのが見えた。