「う…ん…思ったより、余裕じゃなかった…」

「私も抑圧に抑圧を重ねたからね〜あんな風に、体にくるとは思わなかったよ…」

星川が自嘲気味に笑うと、立ち上がって噴水の方へ歩き出した。

「ゴメン…」

その背中に向かって花倉が謝ると、星川は、

「…同意の上での賭けでしょ?花倉君は気づいてないみたいだけど、賭けの破棄の権利は私にもあったんだよ?」

「え?そうだったの?」   

「ふふふ…私が破棄しなかったのは、私の心の問題…おかげで己の闇を思い知ったよ…」

星川はふり向かずに、そう答えた。

「何それ…どういう事?」

その問いには答えず、星川は噴水のふちに腰かけると、花倉を遠く見つめて言った。

「…今までの前世での事、覚えてる?」

「いや…ぜんぜん…」

花倉に、前世の記憶はない…耳を傾けないと聞き取れないほど、星川は小さな声で呟いた。

「…全部ね…物理的な理由で、一緒にはいられなかったよ…身分違いだったり、兄妹だったり、親子だったり…」

「へ〜…」