「…お二人で通られる方は、久しぶりです…どちらが先に通られますか?ご一緒でもかまいませんが…」

番人は、手元の資料に目を通すと言った。

「え…一人ずつしか通れないって、聞いてますけど…」

女が首を傾げると言った。

「そうですね…通常はそういう決まりですが、お二人の場合…まぁ、いいじゃありませんか…」

「え?気になるんですけど…」

「まぁ、いいじゃない…あ、いい事思いついた…!」

ナゼか男は番人に同調すると何かを思いついたらしく、手を叩くとイタズラっぽく笑って、

「悪いけど、先行ってて…」

と男は女にそう言うと、桜が舞う桜並木の道を突然戻り始めた。

「ええ?!どうしたの?」

女は訳が分からず、走り去って行く男の背中に向かって問いかけた。

「いい事思いついた〜」

男は走りながらふり返ると、手をふって答えた。

「ええ?!何?」

「なーいーしょー」

「えー?聞こえなーい!」

大きな声で叫んだが、男はふり返らぬままもう一度手をふると、桜吹雪の中へ消えて行った…