「あ…竹本さん…次、同じ授業取ってたっけ?」

「うん…うちのクラスで、あの授業選択してるの、私と花倉さんだけだから」

そう言って、彼女は愛くるしい笑顔で笑った。

入学して間もない頃に親しげに声をかけられ、何となく話すようになったクラスメイトだ。

竹本千夏さん…可愛い部類の娘だ…

「あ…蝶々…」

「え?蝶々?どこ?」

竹本さんは、キョロキョロと辺りを見渡した。教室内に、蝶々がいる訳がない…

「あ、ゴメン…夢の中で飛んでたな〜って」

思い出して…

「え…?」

やば…絶対変なヤツだと思われた自信がある…

「あ、今のは忘れて…」

「もしかして、青い蝶々?」

「え?」

荷物をまとめて、次の授業へ行こうとする自分の背中に、意外な言葉がかけられた。

「あ…うん…青…かな…?」

不思議そうにふり返って答えると、彼女の目が嬉しそうに輝いた。

「そこは中庭じゃない?桜の木がいっぱい生えてて…真ん中には噴水があって!」

テンションの上がった竹本さんは、一気に話すと自分の反応を待った。

「あ、うん…え?どうして知ってるの?」

自分がさっきまで夢の中でいた、庭の特徴を…

「『光の庭』でしょ?私、初めて会ったよ、その庭の事知っている人!」

「ええ?!うっそ…」

自分はただ驚いて、竹本さんを見つめ返す事しか出来なかった。

自分も初めてだよ…『光の庭』の話を口にした人間に会うのは…