無数に貯蔵された本は、すき間なく本棚を埋め、背表紙に書かれたタイトルは見慣れぬ文字で書かれ、内容をうかがう事は出来なかった。

「そうかな〜私は自信あるけど?」

女は頬杖をついて、机の上に置かれたルーズリーフをペンで指した。

その用紙には、いくつかの案が書き出されていて、その一つに線が引いてあり、そこには『思い行』という意味不明の言葉が書かれていた。

「…行と言うからには、楽じゃないでしょう?本当にそんな修行があるの?」

男は、あまり乗り気ではないようだ。

「調べました〜」

女は手元に用意していた本を開くと、男にそのページを見せた。

「えー思い行とは、一人の人物を思いつづけるという、一風変わった修行の一つである…難易度は高く、陰陽の調整作用に関わり、後生が良いとされている…」

「面白そうじゃない?」

「面白く、なくはないとは思うけど…これ、君がやるの?」

「そう…良く考えたら私、ずっとこれを行とは知らずにやってたし…」