「…この庭で他の人に会った事って、あまりないよね…」

女が誰もいない中庭を見渡して呟いた。

「うん、広いからかな…?」

図書館内では良く人を見かけるが、ナゼか中庭でその人達と出くわす事はなかった。

「あ…ところで、さっきの所なんだけど、もうちょっと面白くならないかな?」

男が提案した。

「あぁ、あそこね〜」

順調に進めてきた作業について、二人はあれこれと検討を始めた。

「なんか、普通過ぎない?」

「ま〜ね…何か名案でも?」

「そうだね…」

男はイタズラな笑みを浮かべ、あごの下に手を置くと考え込んだ。

「嫌な予感…」

女が男の性格を思い出し、嫌そうな顔をした。

″人を驚かせるのに、喜びを感じるんだったっけ…″

「あ、そうだ…!」




「ん…あ?」

自分でも、ものすごくマヌケな声を出しているのを自覚しながら、声のする方を見上げた。

「講義終わったよ?花倉さん、次の授業一緒に行かない?」

…どうやら大学の授業中、居眠りをしてしまったらしい…うつぶせになっていたせいか、腕がしびれている…

ボンヤリとする頭で、必死に目の前にいる人物の名前を思い出そうとした。