ファンタジー
ひよこ丸/著

- 作品番号
- 826251
- 最終更新
- 2012/12/16
- 総文字数
- 2,776
- ページ数
- 6ページ
- ステータス
- 未完結
- PV数
- 294
- いいね数
- 0
「ま、待ってくださいっ!」
冷たい風が体に当たる暗闇の中、僕がはいた白い息だけがヒュゥ…っと音を立てる。
思わずそういって僕は彼を引き止めた。
言ってからすごい後悔した。でも勝手に口から出てきたんだからしょうがないと思う。
街頭に照らされてキラキラと光る彼の銀髪。短髪ともボサボサ髪とも言えるそれをまとって僕の方を振り返る。
「…なに?」
だるそうな顔に眠そうな目。
細く薄い体を丸めて廃材の上にしゃがんでいる。
その姿と光景はとても奇妙…珍妙とも言えるだろう。
冷や汗の代わりに冷たい風が僕の体を覆う。
…寒い。
…なんでこんな人と関わろうと思ったんだろう?
それを思っていてもなお、僕は言葉を続ける。
「ぼ、僕を…」
唇が寒さと怯えで震える。
友人と話しをすることすら苦手なのに、この見知らぬ人で変な人としゃべろうとしていることが驚きだ。
緊張、恐怖、寒さ、興奮…
それらが混じり合って今の僕を作っている。
怖い…怖いよう…
でも。
−−今、ここで言わないと…!
ガタガタと震える体に喝を入れ、拳をギュッと握る。
「ぼ、僕を…一緒に連れていってくださいっ…!」
彼がニッと少しだけ笑ったように見えた。