「七海ちゃん。あたし、ちょっと生徒玄関まで行って見てくる」


「あたしも一緒に行くよ」


「いいよいいよ。七海ちゃんはここで待ってて。先生がいたら呼びに来るからね」


そう言ってくれた花梨ちゃんが、軽い足取りでベンチから離れていった。


ひとりになったらなんだか急に寒さが身にしみてきて、あたしは首をすくめる。


肩より短くカットした髪が風に揺られて、乱れた前髪を整える指先もすっかり冷たくなっていた。


改めて周囲を見回すと、他校のライバルたちがすごく優秀に見えてきて、不安になってくる。


そわそわ視線を泳がせていると、教科書を手に持って読みながらこっちへ歩いてくる男子生徒の姿が目に映った。