「さーてと。七海ちゃんの長ぁーい話がやっと終わったところで、そろそろ引率の先生来たかな?」


悪びれた様子もなく話の流れをブッた切った花梨ちゃんに、ムダと知りつつ、一応抗議してみた。


「あのね、花梨ちゃん? 親友の話はもうちょい心を込めて聞きましょうよ」


「聞いてる聞いてるー。めっちゃ心を込めて聞いてるー」


聞いてるって言いながら、耳の中に指の先を突っ込んでるし。


冷たいなぁ。切ない想いに身を焦がす親友を、慰めようとか力になろうとか、考えてくれたっていいじゃん。


でもまあ力になろうにも、どうにもできないことだけどね。


やっぱりあたしはこのままずっと、王子様に恋し続けるんだろうな。


想いの叶わぬままに……。


「でも本当に、そろそろ先生来るよね? 一時間前には来るって言ってたしね」


運命の初恋物語を話し終えて満足したので、あたしもようやく意識が現実に向き始めた。


周りには他校の受験生の姿もチラホラ見える。みんな緊張をほぐすために、そこら辺を歩き回ってるんだろう。