もう佐々木が何を言っているのかも分からなかった。

気がついたらそいつの方に走り出していた。

後ろから「オイ野宮!?」と叫ぶ声が聞こえたけどそんなのお構い無しだと言わんばかりに、俺は全力疾走した。

まぁそこまで十メートルあるかないかぐらいだったから、全力を出しきる前にすぐにそいつのもとに着いたけど。

「ねぇ」と一言そいつに向かって話しかけてみた。

自分でも何故こんなに大胆な行動に出たか分からない。

でもそれほどそいつの容姿は綺麗だったんだ。

…だけど、そいつは答えるどころか俺の方を振り向きもせず歩き続けた。

もしかして聞こえなかったのかな?と思い、もう一度「ねぇ」と言ってみた。

…だが何も反応が無い。

そこで俺はそいつの肩に手を置き、「ねぇってば!」と少し強い口調で言った。

そいつはやっとこっちの方を振り向いたかと思うと、二重瞼のでかい目でキッと睨みつけてきた。