「結構地味な方だったのか?」

俺がそう訊くと、佐々木は「ああ」と一言頷いた。

「それにしてもお前昔のクラスメイトの名前ぐらい覚えとけよ」

いや、俺は名前を覚えるのが苦手なんだ。

そう佐々木に告げると佐々木は顔を歪ませ「ったくよ…」と呟いた。

「で何でそんな地味なヤツ好きになったんだ?」

俺が素朴な疑問を投げ掛けると、佐々木は「そこまで言う必要ねーだろ!」と焦りながら言ってきた。

ここまで言ったんだから、経緯まで言えよ。

全く、顔を赤くさせやがって。
お前は恋する乙女か!って突っ込みかけたところで、ふと俺の目にある姿が焼き付いてきた。



一一一可愛い。



俺の目にいきなり飛込んできたそいつは腰まで伸びた漆黒の艶やかな髪は春の気持ちいい風になびかせていて。

華奢な体をさらに引き立てている細くて白い体で。

シミ一つないきめ細やかな肌にぷるんと思わずキスしたくなるような真紅の唇で。

瞳は髪の毛と同じ漆黒で少しでも気を抜いたらそいつの瞳に吸い込まれそうで。               
ここからでも分かる、そいつの圧倒的な存在感。

ああ、こいつがいねぇと世界が成り立たねぇな、と本気で俺は思ってしまった。

だけどそれほど、そいつはとにかく何もかも全てが完璧な容姿を持っていたんだ。

そしてそんなそいつに俺はど真ん中、ストレートだったわけで。