「…田上だよ」

佐々木はまだうつ向いたままボソッとそう呟いた。
だがさっきより幾分か落ち着いたように見える。

「…田上?」

聞き慣れないその名前を思い出そうと、必死で記憶の中を探った。
だがどうしてもその単語は俺の中ではインプットされてなかったようで、俺は首を傾げて言った。

「そんなヤツいたっけ?」               
「…いたよ」

佐々木はそう言ったが俺にはどうしても思い出すことが出来なかった。

まぁ同じクラスになったことが無いんなら記憶が無くても普通だよな。

「あー…多分俺、一緒のクラスになったことねぇから、そいつのこと知らねぇわ」

そう言ったら佐々木が驚いた顔で俺を見上げてきた。
何か俺不味いこと言ったけ?

「同じクラスだったじゃねーか!俺らと一緒に!」

はて?
同じクラスにそんなヤツいたっけ?

「まぁ田上あんま目立つ方じゃなかったしな」