「…何ですか?」

そいつは俺をかなり訝しげに見て、さも苛立ったかのような口調で言ってきた。

だけど俺はそいつの表情なんてお構い無しに「え、と…」とたどたどしい態度を示していた。

どうしよう。
いざとなるとなんて言えばいいのか分からない。

まさかあなたに惚れましたなんて言えないしな…。

「用がないのなら行きますけど?」

そいつは俺のこの焦れったい様子を見飽きて、そう言ったかと思うとまた髪をなびかせながら歩き出した。

あっ!行ってしまう…。
とりあえずそいつの…

「ね、ねぇ!君の名前は?」

名前だけは頭に刻みこもう。

「……桜田棗(さくらだ なつめ)」

棗は顔だけを俺の方に向けて溜め息まじりにそう呟いた。

かと思うと、またすぐに学校の方へと歩き出して行った。

「棗、か…」

俺は一人呟いたのだった。


一一一一一これが一一女神との一一一一出会いだった。