<翔side>


ピロロロロ───


「もしもし」


学校から帰ってすぐに寝ていた俺は、ケータイの着信音で目がさめた。


...誰だよ。寝てたのに。


『翔か?俺だよ俺♪』


その電話の相手は...


潤だった。


「俺俺詐欺かよ」


俺だよ俺、ってよく言うセリフじゃねぇか。


『違ぇよ。それよりさ...お前、どうだったんだよ』


「どうって何が?」


なんかしたっけな、俺。


『告白だよ。渡部に』


「あぁ」


思い出した。


って言うか告白したつもりだったけど...


唯華はそうとらえてないみたいだし。


『どうだったんだよー』






異様にテンションが高い潤。


「全然ダメだったぞ」


そういうことは好きな人に言うんだよ、って言われたし。


好きだから...言ってるのにな。


『翔からの告白、拒否する人初めてだな』


拒否する人初めてって言うけど、告白するのが初めてだし。


まず、拒否されてないよな?


「伝わんなかっただけだから」


『ふーん...じゃあがんばれよー』


ふーん...ってなんだよ!!


しかもじゃあって!!


ってか何のために電話してきたんだよ。


「がんばるよ」


今も頑張ってるけどな。


『俺はこれから...彩純とな、うん。アレだから』


「何の報告だよ」


いちゃいちゃを見せつけたいのか!?


昼休みも見せつけてきたくせに。





昼休みは...


俺、彩純と食べるから渡部呼んできてもらうか?なんて、言ってきてくれて。


正直嬉しかったんだぞ?


やっぱいい奴だなーって。


『じゃあな。また明日』


「うん」


ブチッッ──


電話が切れてまた...


睡魔が俺を襲ってきた。


寝るか。


さっきまでも寝てたけど。


そして再び俺は眠りについた。







<唯華side>


「今日のHRは文化祭についてだ」


もう10月に入ったけど...


まだまだ毎日暑い。


あれから、あずちゃんと近藤くんと...


そして三浦くんと毎日、お昼休みを過ごしている。


「まず、実行委員を決める。したい人はいるか?」


...いるわけないじゃん。


絶対めんどくさいよ。


実行委員なんて。


「じゃあくじ引きでいいか?」


...それもやだな。


私のクラスは女の子が13人と男の子が15人、全員で28人。


実行委員は女子1人、男子1人だから...


13分の1の確率で実行委員だ。


運...悪いんだよね、昔から。


「女子こっち、男子こっちのくじ引け」


出席番号順か...


渡辺だから一番最後なんだよね。






残り物にも福があるって言うじゃん。


大丈夫大丈夫...



「みんな引き終わったな。開けていいぞ」


先生は私が引き終わったのを見届けてそんな声をかける。


「花丸が書いてある人に実行委員をしてもらう」


私の引いた紙に書いてあったのは...



花丸。


いやーっ!!


やっぱり私、運悪い。


残り物に福ないじゃん!!


「あずちゃーん!!」


「...唯華、またなったの?」


実を言うと...


去年もくじ引きで実行委員になってしまっていたのです。


2年続けては免除してよー...


それより...


「男の子は誰なんだろ?」


「誰だろね?」






あずちゃん、考えてくれてないでしょ!!


自分が実行委員じゃないからって!!


「じゃあ実行委員の人は放課後、第一会議室に行け。これでHRを終わる」


はぁぁ...


やだー!!


一人でうじうじしていると...


「女子の実行委員誰ですか?」


そんな声が教室に響いた。


この声の持ち主が男の子の実行委員?


その声の持ち主は...


メガネをかけていて、制服も校則どうりに着ている真面目そうな男の子だった。


よかったー...


真面目そうな人で。


「私だけど?」


去年はヤンキー君で文化祭の仕事を一人でした。


「渡辺さん。よろしくね♪」


フニャっと笑う男の子。


正直言うと...かわいい。






「うん。よろしく」


ちょっと...


良かったな。


そんなに嫌じゃなくなったかも!!


「よかったじゃん。真面目くんで」


「うん!!」


あずちゃんは去年の苦労も分かってくれている。


去年はあずちゃんも手伝ってくれた。


「もうすぐ授業始まるよ」


「そうだねー♪」


私は少しルンルンしながら席に戻った。



───キーンコーンカーンコーン


授業が始まって少し...


隣から話しかけられた。


「お前、運悪いんだな♪」


なんだ、語尾の♪は!!


「しょうがないでしょ!?生まれつきなんだから!!」


生まれつきって言うのもなんか違う気がするけど。


「古森と一緒なんだってな。アイツにはきをつけたほうがいいぞ」


へぇ...あの男の子、古森って言うんだ。






それより...


「気をつけた方がいいってどういう事?」


...そんなにヤバそうなオーラとかだしてないし。


真面目っぽいじゃん。


「いや...俺も噂で聞いただけなんだけどさ?」


「うん...」


古森くんって、そんなヤバい人なの?


「一見、真面目そうだけど...裏では女と遊びまくってるらしいぜ?」


女と遊びまくってるのか...


全然見た目じゃ分かんないよ。


でも...三浦くん、何でそれを私に言ってくれたのかな?


三浦くんなりの...


優しさ、とか?


だったらお礼言わなきゃ!!


「三浦くん...」


「ん?」


「教えてくれて...ありがと」


私がそう言うと...






「...おう」



それだけ言ってそっぽを向いてしまった。



三浦くん...照れてるよ!!



だって頬、赤いもん!!



三浦くんが照れるなんて、珍しいな...



なんか...かわいいかも。



なぜか...心臓がドキドキし始める。



...なんでだろう。



私は自分の気持ちが動き始めていることにまだ気づかなかった。