駅へ到着すると、周囲には人がごった返していた。

何かあったのか、窓口には問い合わせをする人が溢れており、改札はごった返していた。

普段なら閑散としている避暑地の小さな駅だが、夏休みの週末ということもあり学生や家族連れの姿が目立つ。

その中に香織の姿が無いことを確認すると、迷わず改札を飛び越えてプラットホームへと駆け込んだ。

駅員が驚いて僕を制止しようと追いかけてくるのが見えたが、そんな事構っていられなかった。

香織の名を呼び周囲を見回すと、見覚えのある姿が大柄な男といるのが見えた。

僕の声が聞こえたのか、香織は誰かを捜すような仕草をしている。

渡り階段で一つ向こう側のプラットホームだが、大きな荷物を持つ人とすれ違いながら進むその距離は、なかなか縮まらず随分遠く感じた。

いっそ線路に飛び降り横切りたいと思ったその時、駅員に腕を掴まれた。

後で知ったことだが、一つ前の駅で爆弾を仕掛けたという悪戯電話があり、この駅でも不審人物を警戒していたらしい。

そこへ僕が入場券も買わず、改札を飛び越えたのだから、不審に思われても確かに文句は言えない。

だが、今はそれどころではなかった。