「あなたにお会いしたいと仰る方がいらっしゃるのです。
ご自宅へお送りすると見せかけてそちらへ向かう予定だったのですが…あなたがここまで車に弱いとは思いませんでした。
怪しまれない為に小村に荷物を運ばせ、電車で1つ先の駅まで行ってから降りて頂くつもりで別の車を待たせていたのですが…なかなか事はうまく運ばないようですね」

「…1つ先の駅って…あたしが降りるはずないじゃない。何を馬鹿な…」

「あなたには電車に乗ってすぐに薬で眠って頂く予定でしたので」

淡々と話す村田さんに、ゾッとする。

あたしをどうするつもりなのだろう。

この人は、最初から家へ帰すつもりなどなかったのだ。

「…行かないと言ったら?」

「あの方は時間に厳しい方ですので…急ぎますよ。
怪我をしたくなければ、素直に付いて来てください」


あたしの意志など無視すると逆らうことを許さない力で腕を引いていく。

背中を冷たい汗が伝った。



ココカラニゲナケレバ…