「大丈夫ですか? まだ体調が優れませんか?」

自販機の前でモタモタしていたあたしに、背後から村田さんが声をかけた。

彼の視線から逃げたはずなのに、いつの間に後ろに回ったのだろう。

全く気付かなかった。

いくら考え事をしていたとはいえ、こんなに大柄な彼が、すぐ傍に立つことに気付かなかったなんて…。

ボディガードというのは、気配すら消して傍についているものなんだろうか。と、思わず真夏であることを忘れ身震いをした。

自分を護ってくれる人に嫌悪を抱くなんて…。

昨日の今日で敏感になっているのかもしれない。

そういえば…と、ここへ来る時、余りにも心配する廉君に電車を却下されて、安田さんに迎えに来てもらった事を思い出した。

廉君はあの時から、ずっとこうなることを心配していたのかもしれない。

廉君はいつだってあたしを一番に考えて心配していた。

もしかしたら夏休みに入ってからずっと、片時も心の休まる時なんて無かったのかもしれない。