香織の無事だけを願い、ただひたすら駅を目指す。

頭に叩き込んだはずの地図だが、実際に走るのは車道ではなく歩道で、シュミレーションしたようにはいかなかった。

車で何度か通ったことのある道を必死で思い出し、標識を頼りにひたすら走るが、地理に不案内な土地であるため、焦る気持ちとは裏腹に思うようにはなかなか進まなかった。


真夏の午後の容赦ない太陽は、じりじりと照りつけ僕の体力を奪っていく。


繁華街に差し掛かると人が増え、ぶつからない様に避けながら走るペースは乱れがちになっていった。

このままでは体力を消耗するばかりだと判断した僕は、人混みから離れてペースを取り戻そうと、裏道への角を曲がった。

そのとき、突然角の店のドアが勢い良く開き、中から男性が出てきた。

予想外の出来事に、反射的に避けようとしたが、勢いのついた身体は簡単に止まらず、彼を押し倒すようにして転倒した。