「お嬢様は車には弱いけど電車は大丈夫なのだと仰って、私を気遣ってくださいました。
本当にお優しい方です。もしもあのままこの車にご乗車していらしたらと思うと…」

「解った、もういい。お前は病院で指示を待て。
…決して僕と父以外の者に何かを話すことは許さない。
……たとえ、それが警察であってもだ。解ったな?」

たとえそれが春日の使いのものであっても…

そう言いたいところをグッと堪えると、すぐに紀之さんの車に向かった。


何度携帯を鳴らしても出ない彼女に焦りが募る

今頃香織の身に何か起こってはいないか、不安で不安で仕方が無かった。

香織の体調を心配して急きょ予定を変更したと小村は言ったが、村田という男が味方である可能性は薄い。

彼女を無事に家へ送り届けるとは到底思えなかった。