数日後 僕らはまた葉月に呼び出された

迎えてくれた朋代さんが せっかくのお休みなのにごめんなさいねと

言いながらも 助かったわと複雑な顔をした



「衛さん 二人を前にして黙ったままなの 

葉月には余計なことを言わないように言っておいたのだけど 

あの子のイライラが見えて」


「一触即発ってところだね 親父を怒らせなきゃいいけど」


「私 いない方がいいみたいね 葉月ちゃんの味方ばかりになっちゃうでしょう

他のお部屋で待ってるわ」



玄関先でヒソヒソと話していると 奥から 賢吾か と呼ぶ声がして 

慌ててスリッパを履いて部屋に行った

二宮君は 僕の顔を見るとホッとした表情を浮かべ 葉月はすがるように

僕を見あげている

父も僕が来たことに安堵したようで 仕事はどうだ順調かなんて 

まるで関係のない話を持ちかけてきたみんなが 僕を頼りにしているのは

明らかだった



「せっかく顔をそろえたんだ そろそろ本題に入ろうか 

このままじゃ埒が明かない」


「そうだな 言いたいことがあったら言いなさい 聞こうじゃないか」



父の威圧的な言い方に萎縮している二宮君に この前僕に言ってくれたように

話すといいよと そっと後押しした

今日はお時間をありがとうございます まず礼を述べ 彼の話が始まった

葉月との出会いから職場でのこと 自分の今後の身の振り方 

そして葉月のお腹の子どもの事への責任

けれどそれだけではない 葉月と一緒に歩いていきたいのだと 

それこそ言葉を尽くして懸命に父に語りかけた

腕組みをし じっと聞き入る父の顔は険しく固かったが 彼の話が終わると 

わかった……と一言だけもらし腕組みをはずした

沈黙の時が重苦しく流れていた

僕から見ても 二宮君の話しぶりは誠意があり 彼の真剣な思いが充分に

伝わってきた

それなのに父の表情は いまひとつスッキリしていないように見られるのだ

父はまだ納得できない何かを抱えているようで 僕なりに思いをめぐらせていた



「お父さん 話を聞いてくれるって 聞くだけなの? 

そのためだけに彼を呼んだの 

ちゃんと話をしたのに それってあんまりだわ

いっつもそう 都合が悪くなると黙るじゃない 何が不満か言ってよ」



食って掛かる葉月を父が睨みつけ 二宮君と僕はとっさに葉月の腕を引寄せた

それまで黙っていた朋代さんが口を開き 険悪な空気が少しだけ和んだ