ちょうどほかの客が居ない昼下がりの午後

常連といえる海斗がいたから思い切って話しかけてみたのが始まり

しゃべってみるとやっぱり同い年か年上と話しているような安心感を得られた

落ち着いた喋り方と言葉使い

あまり表情が豊かとはいえないけど、透き通ったきれいな漆黒の瞳をしていて

言いにくいこともきちんと読み取ってくれる

時節見せる優しい表情も笑みも

けれどどこか寂しい雰囲気があって

それがより一層彼の魅力を引き立てていたように思う

そんな海斗に

いつか、彼女ができたら連れてきてね

とおどけて言ったのがきっかけで店を閉めるのをやめた

いつか海斗が誰か特別な人と並んでやってくるのを見るのも悪くない

ここで待ち合わせをして楽しい時間を過ごしてくれるのなら

それだけでいいような気がしてきた