黄瀬くんはなにかするわけでもなく、じっと黒瀬くんを見ている。
そして、ゆっくりと口角をあげた。
────まさか、これを狙っていた?
いや、それはないはず。
だとしたら……楽しんでいる?
黄瀬くんから黒瀬くんに視線を戻す。
彼は鮮やかにボールを操り、正確にパスを出す。
周りがきづかないのはきっと、彼のボールを持っている時間が他の人にくらべ、極端に短いからだ。
────あっ。
先輩がパスを出そうとした1年の子のボールをカットして走り出す。
ひとり……ふたり……抜いていく。
その時────
黒瀬くんが、動いた。