あたしは目を凝らしてコートの中を隅々まで見渡す。



この状況で、あんなに正確で、尚且つスピードのあるパスを出せる人がいるわけがない。



──だれも、当てはまらない。



みんなが唖然としたままゲームは再び再開する。



先輩からボールをカットした1年生がパスを送る先には────



黒瀬……くん…?



右手でボールを受けとると、左手にボールを持ちかえて、またガードされていない1年へと素早くパスを回していた。



……すごいっ…



今のところ黒瀬くんの動きに気づいているのは、あたしと────


黄瀬くんだけだ。