「走ってないの?」


近づいて聞いてみれば、黒瀬くんは首を横に振った。



「走ったけど?」



走ったって……なんで全然疲れてないのよ!?


「ありえない……なんで?」


「……さぁ?昔から走ることは得意なんだよ」



平然と言う黒瀬くんの後ろから、少し息を切らした黄瀬くんが呟いた。



「ソイツ……足が速ぇよ。1年の中で……いや、全校生徒の中で一番かもな」



「……そ、そうなの?」


「……あぁ。このオレが抜くこともできなかった。追いつくこともな」



……黄瀬くんですら抜けなかった。



その事実は大きい。