あたしも一緒になって探すと、
「……いた…」
フツーに彼はいた。
しかも、列のまん中に。
「あれー?いないの?黒瀬くんー?」
「……先輩、あそこ……」
「僕が黒瀬コウキです。ここにいます」
手を挙げて一歩前に出ると、周りの部員たちが驚いて黒瀬くんから離れた。
「いつのまにーー!?」
「ずっといましたよ」
サラリという彼に、理恵先輩はひきつった笑顔でいう。
「じゃ、じゃあ黒瀬くん、お願い」
「はい。僕は1年の黒瀬コウキです。目標は……特に無いです」
「はああぁぁぁ!?」
全員の声がハモった。
もちろんあたしも面食らってしまった。
ここまできて……しかも、みんな言ったのにひとりだけ言わないなんて…
「ほ、ほんとに無いの?」
再確認する理恵先輩に、黒瀬くんはいたって真顔で
「はい」
と答えた。