第一章「地上」

episode:1「アースランド」

「ふわぁ…すっごい人」

今日、初めてこの地に足を踏み入れた俺。色拓斗は、君と同じ人間ではありません。

いきなり言われてもわかりませんよね。ですが、これから話す内容は、君だけの秘密です。

俺はここ、アースランドの守護神です。

このアースランドの全てを掌握する力が、俺の中に有ります。

つまり、人間じゃないんです。

この事は、信じる人にしか知られてはならない禁書目録。

なので、内緒にしてくださいね?

色拓斗という名前も実名ではありません。

本名は、「タクティクス・アウル・シックザール」。
「拓斗」は、父親が着けた愛称です。

聖なる場所で17年間もの隔離が解かれ、俺は漸くこの地に足をつく事が出来ました。

ここから、俺の全てが始まる…

…はずだったんだけど

「う…きぼちわるぃ…」

人混みに酔い、俺は近くのカフェに滑り込んだ。

ブレンドを頼み、席で酸素を補充する。

普段、守護神の力は抑えて普通の人間と同じ位に合わせている。

それが命取りとなるとは…

「お待たせしましたー」

コト、と目の前にいい香りをしたコーヒーが置かれた。
定員は足早に次の席へと運んでいる。

「カフェで働くのもあり…かな」

仕事も探さないと。でも、先ずは住む場し…

「っっ!?」

いつのまにか豹変していた目の前のガラスを見て、激しくコーヒーが噎せ返る。

ガラスに、翡翠色の眼をした男性がへばりついて俺を見ていた。

「がはっ!げほっ…げほっ…!」

な…なんだ…?

「…」

「…」

少しの間、沈黙が流れ「バンっ」とその男性がカフェに入ってきた。

そして真っ直ぐ、俺へと向かってくる。

「!?」

俺は訳も解らず、その場に固まっていた。

「…みつけた」

「へ…?」
「っ!?」

ガッ、と顔を掴まれ、俺は怖くて身を縮めた。

男性はゆっくりと俺がかぶっていた変装用の帽子と眼鏡を外す。

そして俺の頬に手を当て、グッと顔を近づけてきた。

「な、なにを…」

「やっぱり…僕の眼に狂いはなかった…」
「この蒼い綺麗な髪…吸い込まれそうな深海色の瞳…長い手足に完璧なプロポーション…」
「やっとみつけた…」

なんか…訳の解らない事をペラペラと話してる…

「は、はなっ、離しっ…」

必死に話しかけるも、全く聴いていないようだ。

突然、男性がカッと眼を見開いた。

「君っ!所属は!?」

「はいっ!?」

「所属!何処の事務所の子!?」

「は、え!?事務所!?」

「そう事務所!何処の事務所の子だい!?」

「へ!?俺事務所なんて…!?」

「!」
「無所属なのかい!?」

「無所属っていうか、今日この街にきたばかりなんですけど!?」

「よし!じゃあ決まり!」

「へ!?」

「僕の事務所においで!」

「は…!?」

勢いにつられて、つられたまま答えてたけど、はっきり言って意味が解らなかった。

無所属?事務所…?

「じ、事務所って…?」

「!」

男性は突然振り返り、窓の外を見た。
カフェはこの人のせいか、しぃんとしている。

「まずい…他社が…」
「1…2……7社も…」

「他社…?」

俺が外を見ると、スーツ姿の人が数人、こちらを見ていた。

「ひぃっ…!?」

「君、名前は!?」

「へ!?し、色…拓斗で…」

「拓斗君、走るよ!」

「へ!?あ、ちょっ…!」

ぐいっと腕を掴まれ、俺は咄嗟に鞄を持つ。

「走って!」

いつのまにか俺の帽子を被った男性は、俺の腕を掴んだまま人混みに入って行く。


俺…どうなっちゃうの…!?