「早くそれ捨てな」


ベンチの上に登って半べそになっていると、後ろからそう言われた。


慌ててせんべいを落としてしまって、完全にベンチから逃げられなくなった。


「ほら、こっち」


そう言われて振り返る。


見なくてもわかっていた。


やっぱり、奏くんが手を差し出して立っていた。



「手、持っててあげるから、飛び降りな」


私は奏くんに両手を引かれて、思い切ってベンチの背もたれを飛び越えた。


けど、やっぱり腰が引けていたんだと思う。


右足が背もたれに引っ掛かって、そのまま奏くんの上にダイブした。