予鈴が鳴ったからか、廊下にはほとんど人がいなかった。


奏くんはなぜかさっきから黙り込んでいて、めっちゃ気まずい。


「ちょっと、急いだほうが、いい、かな?」


カタコト気味に言うと、なぜか奏くんは立ち止まってしまった。


「……奏くん?」


返事がない。


「あの、どうしたの?」


それでも黙ったままうつ向いている。


仕方なく学ランの袖をキュッと引っ張った。


「い、行こ?授業始ま……」


パシッ!!


袖を引っ張っていた手を急に握り返される。


ビックリして言葉が出なかった。


うつ向いたままだった奏くんは、ゆっくりと顔を上げて私の目を見た。


「―――ツリバシコウカって知ってる?」