ピシャッとドアが閉まった瞬間、奏くんはぶはっと吹き出した。


「ひどい……ホントに痛いんだから」


「ごめんごめん。だって、マンガみたいで」


くっくっと笑いをこらえながら小刻みに震えている。


「はい、見せて」


奏くんは軽く息を整えると、私の向かいに座って手を取った。


あんまり優しく手を握ってくるから、不覚にもドキッとしてしまった。


「けっこう刺さってるね」


奏くんはメガネを外して私の手を顔の近くに引き寄せた。


「メガネなくて見えるの?」


「ああ、これダテだから。こっちのがよく見える」


ダテなんだ……


奏くんは集中しているのか、黙ってピンセットを動かした。


微妙な沈黙が流れて、余計に緊張する。