朝は新聞配達。昼間は鳶の仕事、そして夜はたまに飲み屋のキャッチ。

おかげで金にはあまり困らなかった。

鳶の仕事は親方も良い人だったし、何かと俺を気にかけてくれる。

この人にはいつか恩返ししたいと思っている。

それくらい尊敬し、すごく世話になった人だった。


PM20:00


今日は亮と飯に行く約束をしていた。

メールに“栞もくることになった”と昼間連絡が入っていた。


仕事が終わり、親方に挨拶して事務所の外に出ると、生温かい風が頬を掠める。


夏の夜の匂いか・・・


俺は一呼吸してから亮に電話をかけた。


「わりぃ今終わった」


『おお腹減ったし!栞も来るってメールしたべ?それ奈緒ちゃんも追加になったからー』


「奈緒・・・?」



ああまたあの女か


最近よく出没するな


俺は心の中で笑い、亮に今から行くと言って電話を切った。