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「どうしよう、緊張して手が震える」



川越さんに電話をしようと、受話器を手にしているんだけど、うまく押せない。



「大丈夫だよ」



そう言って舜は抱き締めてくれた。



「そういや、前にもあったな。絢華が緊張しすぎて、手足が震えたこと」



うん、あった。


あたしも今、それを思い出していたよ。


あれは、初めて舜の両親に会いに行った時のこと。


あまりの緊張に、吐きそうにもなって。


舜が一生懸命、リラックスできるようにしてくれた。


“はぁー”と大きく息を吐いて



「電話する!」



そう宣言してから、もう一度受話器を手にして、ピッピッとボタンを押した。