「やめっ…!」
勢いに負けて一歩後退すると、背中が壁に当たった。
顔を背けようとしても、できない。
そのまま身体が壁に強く押し付けられて、もう逃げられないと悟った。
重なり合う唇に、こぼれた涙が落ちて、涙味の、キスだった。
……ああ。
どうして、こんな奥にまで私は走ってきてしまったんだろう。
ここ、建物の端過ぎて、誰も通らないよ…!
人目があるところなら、きっと京佑くんだってこんなことしてこなかったのに。
「……は、…っ」
やっと京佑くんの唇が離れていく頃には、もう酸欠状態だった。
「…息、止めてたの」
だって息継ぎの仕方なんて、知らないもん…。